カリフォルニア州で「犯罪者」「違反者」とならないために

令和3年7月26日
 
在留邦人・旅行者の皆様へ


近年,カリフォルニア州(以下「加州」という。)を訪れた邦人旅行者が,現地の法律に違反して逮捕・拘束されるという事例が少なからず報告されています。「法律をよく知らなかった」という方でも,結果として裁判で有罪となり,現地の刑務所に服役されたケースもあります。
こうしたトラブルは,「注意不足」や「軽い気持ち」に端を発していることが多く,日本の生活・習慣に慣れ親しんでいる邦人の方は,誰でも簡単に,こうしたトラブルに遭遇する危険性があると言えます。
知らないうちに「犯罪者」や「違反者」とならないためには,海外生活では意識を「海外モード」に切り替え,常に高い警戒心を持つとともに,現地の法律や習慣をよく理解しておくことが重要です。
以下に,邦人旅行者の方が,加州の法律に抵触する可能性の高い犯罪を列挙しますので,よくお読みいただき,皆様の安全な滞在にお役立てください。

無免許運転

加州の自動車法(Vehicle Code)第12502(a)(1)には,「18歳以上の非住居者(Nonresident)が,本国で発行された有効な運転免許証を所持していれば,第12505条に抵触しない限り,加州の運転免許証無しで運転できる。」と規定しています。この第12505条には「居住者(Resident)」について定められており,査証の種類によっては,居住者と解釈され,たとえ日本の運転免許証と国際運転免許証を所持していたとしても,「無免許運転」として検挙される場合がありますので,注意が必要です。

運転免許証等を担当している加州車両局(DMV:Department of Motor Vehicles)によれば,観光・商用等を目的とした90日以内の短期旅行者は「非居住者」とされ,日本の運転免許証と国際運転免許証があれば,州内で運転ができることとなっています。一方,同条には「居住者が本国の運転免許証で運転できる期間は10日以内」と定められていますので,長期滞在を予定されている方は,お早めに「加州の運転免許証」を取得するように努めてください。

なお,加州の運転免許証を取得するために必要な書類の一つに,米国査証がありますので,ビザ免除プログラムで入国された短期滞在の方(エスタ(ESTA)で渡航認証を受けた方)は,無査証のため,運転免許証を取得することができません。加州運転免許証の取得に関しては,下記ホームページをご確認ください。

飲酒運転(DUI:Drive under the influence of alcohol and/or drugs)

近年,日本でも飲酒運転は厳罰化されています。日本では,免許停止等の行政処分のほか,「酒気帯び運転」(アルコール濃度が血液1mL中0.3mgまたは呼気1L中0.15mgで車両等を運転した場合)では,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(道路交通法第117条の2の2第3号,道路交通法施行令第44条の3),「酒酔い運転」(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転した場合)では,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(道路交通法第117条の2第1号)の刑事罰があります。もし,正常な運転が困難な状態で人を負傷させた場合には,15年以下の懲役(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条)となっています。

一方,加州では,飲酒運転(DUI)は,自動車法(Vehicle Code)第23152~23229.1条に規定されています。血中アルコール濃度0.08%(0.8mg/mL)以上は飲酒運転となり,1回目の検挙でも6ヶ月の免許停止,1,000ドル以下の罰金又は6ヶ月以下の禁固の他,少なくとも3ヶ月間のDUIプログラム(飲酒・薬物に関する教育とカウンセリング)の受講等が義務付けられています。4回目になると,重罪(Felony)となり,4年間の免許取消,1,000ドル以下の罰金又は群刑務所における180日以上1年以下の禁固又は,州刑務所における3年以下の禁固と,かなり厳しくなります。
アルコールの影響には個人差がありますが,ビール中瓶1本(500mL),日本酒1合(180mL),ウイスキーダブル1杯(約60mL)をそれぞれ飲んだ時の血中アルコール濃度は0.2mg/mL(0.02%)~0.4mg/mL(0.04%)と言われていますので,「少しくらい大丈夫」と考える方もみえますが,もし飲酒運転で死亡事故を起こした場合,逮捕されるだけでなく,社会的信用を失い,多額の損害賠償が請求される事態となりえますので,「1杯くらいなら…」という軽い気持ちは払拭し,飲酒運転は絶対に止めてください。

また,開封されたアルコールが入った容器を車内で所持していることや,同乗者が車内で飲酒することも,違反となり検挙されますので,お店で買ったアルコール飲料等は必ず密閉し,トランク等に保管するようにしてください。

公共の場における飲酒

日本では「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」により,泥酔した人は警察に保護され,著しく粗野・乱暴な言動がある等,状況によっては逮捕され,拘留又は科料に処せされます。

一方,当地でも,加州刑法(Penal Code)第647(f)条により,公共の場においてアルコールの影響下にあれば保護され,場合によっては軽罪(Misdemeanor)で逮捕されます。罰則は6月以下の禁固又は1,000ドル以下の罰金,若しくは,その併科となっています。つまり,法律上では,公園のバーベキュー施設やビーチ等公共の場所で飲酒するだけでなく,お酒を提供するレストランやバー,友人宅におけるパーティ等のプライベートな場で飲酒した場合でも,その後,公共の場に出れば,全て違法行為に該当することとなります。しかし,検挙例からみますと,極度に泥酔状態して路上で大声で叫んでいる場合や友人と口論から喧嘩に発展した場合等,他人に著しく迷惑が掛かるような言動がある場合に検挙されているようです。

いずれにしましても,飲酒の機会がありましたら,公共の場における言動には,くれぐれもご注意ください。

家庭内暴力(Domestic Violence)

家庭内暴力(DV)には色々な形態がありますので,状況により適用される条文が異なります。

加州刑法第273.5条に規定されるDVは,配偶者や同棲相手等に対して,故意に肉体的・精神的外傷を負わせた者は,重罪(Felony)とされ,州刑務所における2年,3年又は4年の禁固,若しくは,郡刑務所における1年以下の禁固又は6,000ドル以下の罰金,若しくはその併科となっています。また,加州刑法第243(e)条には,相手を強く押す等の傷害に至らない暴行によるDVが規定されており,郡刑務所における1年以下の禁固又は2,000ドル以下の罰金,若しくはその併科となります。武器や凶器を使用したDVは,加州刑法第245条が適用され,当然のことながら重罪(Felony)となります。凶器の種類によって差がありますが,銃器以外の凶器であれば,州刑務所における2年,3年又は4年の禁固,若しくは,郡刑務所における1年以下の禁固又は10,000ドル以下の罰金,若しくはその併科,となります。

こうしたDV事件では,目撃者等からの通報により臨場した警察官が,関係者の供述からDVが存在したと判断すれば,真実はDVが無かったとしても,配偶者が拘束されるケースがありますので,対応には注意が必要です。拘束されると,たとえ被害者側が「そんなつもりは無かったので,被害を取り下げたい。」と訴えても,検事が起訴相当と判断すれば裁判となります。

米国は,DV事案には非常に厳しく,日本では「よくある痴話喧嘩」に該当するものが,結果的に重大な事態に発展する可能性がありますので,公共の場はもとより,自宅内であっても隣人が通報する可能性があることを念頭におき,言動には十分にご注意ください。

児童虐待(ネグレクト)

児童虐待は,加州刑法第270~273.75条に規定されています。犯行形態により刑罰に差がありますが,軽罪(Misdemeanor)であれば1年以下の禁固又は2,000ドル以下の罰金,若しくはその併科,児童が死傷する可能性のある形態であれば重罪(Felony)となり,州刑務所における2年,4年又は6年の禁固が課せられます。

最近では,日本でも児童虐待容疑で,実の親が逮捕されているケースも報道されていますが,日本では「少し厳しい躾」として,立件が難しいケースでも,当地では容易に逮捕され,裁判となっています。躾のつもりや単なる親子喧嘩のつもりでも,子供の証言次第では検挙される可能性があります。また,少しの時間でも子供を車内に放置して,ショッピングに行けば,通報されて検挙される場合がありますので注意が必要です。

更に,性的虐待になりますと,より罪は重くなります。例えば,日本では父親や祖父が小学生の娘や孫と一緒にお風呂に入る光景は,日本の文化として一般的ですが,米国ではあまり理解されません。女子児童の供述次第では,父親であっても性的虐待と受け取られかねませんので,特に注意が必要です。

また,子供達だけで留守番をさせる行為も,状況によっては児童虐待とみなされる場合がありますので注意が必要です。ただし,加州法には具体的に「一人で留守番が出来る年齢」は規定されていません。米国でも,両親が共稼ぎのため,子供が学校から帰宅後の数時間,一人で留守番をしている家庭も多いようで,自分の子供が一人で留守番が出来るかどうかを判断するための「チェックリスト」を示している自治体もあります。最終的には,ご両親の判断に委ねられますが,火災や地震,泥棒の侵入といった緊急事態を想定しますと,ベビーシッターを雇ったり,親類や知人に預けることをお勧めします。

なお,児童虐待の嫌疑が掛けられた場合,その児童が実の子供であったとしても,CPA(Child Protect Agency)に保護される場合があり,子の親権を取り戻すためには裁判が必要となります。

児童ポルノ所持等

日本でも,児童ポルノの単純所持は2015年7月から処罰の対象となり,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金,提供した者には,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金となっています。

当地でも,加州刑法第311.11条により厳しく規定されており,違反者は重罪(Felony)となり,初犯でも,郡刑務所又は州刑務所における1年以下の禁固又は2,500ドル以下の罰金,若しくはその併科,2回目には,州刑務所における2年,4年又は6年の禁固となっています。特に治安当局は,児童ポルノ画像や動画の頒布や販売等を厳しく取り締まっており,例えば,自分自身のメールアドレスに,児童ポルノ画像を送信した行為も頒布と見なされ,検挙される可能性があります。

売春・買春

加州の刑法第647(b)条等により,売春婦だけでなく,斡旋業者や客も対象に,売春行為は禁止され,初犯は6ヶ月以下の禁固又は1,000ドル以下の罰金,若しくはその併科となっています。

多くの人が行き交う繁華街の中には,夜間になると,娼婦が現れる地域が存在します。警察のおとり捜査により検挙される事例もありますので,たとえ話し掛けてきたとしても,無視することが重要です。

薬物犯罪

マリファナについては、米国には連邦法があり,連邦法の「規制物質法(Controlled Substances Act)」では,マリファナはSchedule1に分類される幻覚作用のある禁止薬物とされ,州法で合法化されたマリファナであっても,連邦法に抵触することになります。連邦法の罰則は厳しく,初犯で単純所持でも1年以下の禁固又は1,000ドル以下の罰金,若しくは,その併科となり,販売目的であれば,5年以下の禁固又は250,000ドル以下の罰金,若しくは,その併科となっています。

なお、繁華街の裏通り等には,少なからず違法な薬物等を扱う売人が存在しますのでくれぐれもご注意ください。

出入国関係

渡航目的が90日以内の短期商用・旅行で,ビザ免除プログラム(VWP)の要件を満たしている方は,査証(VISA)は必要ありませんが,入国に際し,電子渡航認証システム(ESTA)の認証が必要となっています。

ビザ無しで米国を通過することもできますが,米国を通過してカナダ,メキシコ,バミューダ及びカリブ諸島へ渡航される方は,米国の通過する日を含む,これらの国の全期間が90日を越えないことが条件になっています。したがって,もし米国に89日間滞在し,90日目にカナダへ行こうとしても,国境で不法滞在として検挙される場合がありますので,渡航前に,関係する国の大使館等から情報を得て,事前に無理のない旅行計画を立てておくことが重要です。

また,当地に居住する親類の身の回りのお世話をするために,短期観光査証で渡米した邦人が,空港の入国審査で入国理由を「病気の親類の方のお世話」と説明したところ,審査官が「介護の仕事」と判断し,入国を拒否されて日本に帰されたケースがあります。査証が必要な場合は,必ず渡航目的に合った査証を取得するようにしてください。

なお,米国では,重罪(Felony)を犯した外国人及び永住者(グリーンカード所持者)は,国外追放(強制送還)の対象となっており,軽罪(Misdemeanor)であっても,DV等の不道徳な犯罪(Crime involving moral turpitude)に該当する一部の犯罪は対象となりますので,注意が必要です。

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